屋号
自分は梁山泊という古書店の二代目なので、一代で身を立て名を上げやよ励んだ人と比ぶれば有形無形さまざまな恩恵に預かっている事は論を俟たないのであるが、一方でそれ故に味わえない醍醐味などもやはりあるのであって、その一つが屋号を考えるというものである。
名付けという行為は困難さも伴う反面やりがいのあるもので、例えば中高生あるいはオッサンであっても、気の合う人間が3〜4人集まると往々にして「バンドでも組もか」となりがちなのは異論の無いところであろうが、その際にまずやることは決まって「バンド名を決める」という作業である。
しかし、そうしてバンド名を決めた後に継続して活動をするかと言うと、十中八九しないのであって、これなどは活動そのものよりも名付けという行為の方が楽しいことの証拠と言える。
とは言え、今さら別屋号を立ち上げたいかと言われればそれはそれで現実的にさまざまな不便、不利、親不孝、などの問題があるので、自分には名付けの喜びを感じることは出来ないのか、と悲嘆に暮れかけたが、屋号を基本的には変えず、名付けの喜びも味わえる折衷案として、プラスアルファを付け加える、という方法があることに気が付いた。
これは要するに今ある名前の前、もしくは後に新規のフレーズを加えるという方法で、小店でも「ブックフォールト梁山泊」という店舗が過去にあった。
しかしこの方法は、付ける側に(自分の様に)横文字のボキャブラリーが貧困な場合、ややもすれば集合住宅名の様になってしまうきらいがあり、例えば
グランドメゾン梁山泊
などにした場合、入居希望者ばかりが来店してしまうことは明らかなので決断には慎重を要する。
この傾向は「横文字+漢字」の字面から連想されるものの様なので、プラスアルファを漢字にしてみてはどうかと言うと、
魁!梁山泊
など、なんとなく女人禁制感あるいはライトウィング感が漂ってこれも難しい。
そこで柔らかく平がなを足すとどうなるかと言えば、
たのしいほんや 梁山泊
ゆかいなふるほん 梁山泊
の様に、後に続く屋号と並ぶと大変座りが悪いのは否めないのでこれも没である。
そこで、政治家がよくやる「名前をひらく」という手法が考えられる。
梁山泊→りょうざんはく
しかしこれだけなのも何か物足りない気がするので、記号などを付けたくなるのが人情だが、そうすると
りょう☆ざんはく
という具合にメリージェーン感が出てしまうのでこれも没である。
やはり現状維持で納得するのが良い様だ。
― 25日から古書のまち内、小店の隣にオリエントハウス萬字屋さんがオープンされることを祝して。
(揶揄する意図はまったくありません。)