ひねりとぼりと安売りと

 古書店にはそれぞれ専門分野があり、主力として取り扱う商品がある程度決まっています。

 専門店として長く営業を続けているところは、古書目録という販売カタログを発行しているところも多く、それらは各店が顧客へ発送し注文を乞うのですが、同業者もそれを見て他店の品揃えを知ったり、価格を参照したりします。

 また、自店では日頃扱わない商品が何かの折りに入荷した際、その分野に強い書店の目録を引っ張り出して、当該の商品や類書を探して、専門店での位置付けを参考にしたりします。

 これは私が父や諸先輩方を見て学んだやり方で、私は古書店の本道だと思っているのですが、今はネット時代なので、なんでもとりあえずはネットで調べる、というのも業界の主流である様です。

 そんな中、某世界的大手サイトなどを覗いてみてよく思うことが、ネット検索に引っかからない本は分野・内容に関わらず、とにかくべらぼうに高いということ。

 学問的価値/文芸的価値/美術的価値のいずれかがまず重要で、それに加えて稀覯であり、市場での需要がある物に高い価値がつく、と書かれたのは反町茂雄氏ですが、その観点から見て、どうも疑問の残る様な物に高値がついていることがある様に思えます。(古典籍に限らず一般書でも)

 意識的に高い値付けをすることを業界用語で「ひねる」と言いますが、専門外の店がひねった値段を付けているけれど、専門店からするとそこまでの本ではない、ということが往々にしてあります。

 父から繰り返し言われたことに、「”なんかわからんけど高い”ではいけない。高い値段を付ける場合には何故その値段になるのか根拠が言えなくてはいけない」という言葉があります。

 ネットでの価格参照も商売上必要ですが、それとは別ラインで、自分の中の絶対感覚とでもいうべき物を作っていきたいと思います。

「ひねりまくるのは簡単。安売りも簡単。適正価格こそ難しい」
 ―心の格言


おわり