瀬尾氏と私 パート2

あらすじ
 瀬尾を敬遠しながらも憐憫とも同情ともつかぬ奇妙な想いを抱いていたSであったが、時代の趨勢には逆らえず、瀬尾に敵対する勢力に加担するもやむ無しとの転向宣言を旧友に伝えた。その決断がもたらすものとは…

 という誠に馬鹿馬鹿しい想いを愚にもつかない文章で先日綴ったのであるが、先日ついにSEOの専門家との会談と相成った。

専門家はやはり専門家らしく専門用語を多用するのだが、それというのもわからないことはわからないと言えばいいものをかしこと思われたい一心でこちらがわかった様な顔をすることが主たる原因なのであって、最初は素人向けの言葉で易しく解説してくれていたところが段々に専門用語が増えていき、内部瀬尾、外部瀬尾、ヒリンク、ソース、アールエスエス等と畳み掛けられ、「キシャはニッチなニーズに対してイカに対応していくかがジューヨーなわけですよね」等と問いかけられたので一瞬この人はお経でも唱えているのだろうかと思ったがそんなわけが無いことは明白なので「マ、そうですね」と枝雀師匠の物真似で誤魔化すこと数回、最初は横でニヤニヤしていた友人が見かねて助け舟を出してくれたおかげで、高額なホームページの作成の話になりそうになるのをどうにか回避して抑えめの予算でのプランを考えてもらい、「はっきり言って弊社はSEOのトップクラスですから」というそこだけ抜き出して聞けば胡散臭さ100パーのセリフも頭から信じ込んでSEO対策をお願いすることとなった。

 しかし最後に連れションをしながら一言、「SEO対策だけやってホームページにお金をかけないのは一等地に場所を借りて安っぽい店をやる様なものですよ」という旨のことを言われ、どうにかお金をかけずにやりたいという自分の想い、友達だから損得抜きで協力してくれている友人の想い、せっかくやるのだからいい物にしないと意味が無いという専門家の想いなどが相まって私の胸の奥底にある男気スイッチ、この場合は「金のことは二の次だ、理想を追うのだ」というスイッチを押しそうになるのを、最近やりくりに追われてめっきり老け込んだもう一人の自分がどうにか押さえ込んで、「いずれビッグになるから今回は格安でヨロシク」と矢沢のエーちゃんの様なセリフでどうにか誤魔化し、しかしそんな自分の言葉にすぐ気恥ずかしさを感じて「細く長くお付き合いしましょうネ」等と180度違うキャラクター、まるでたまたま飛び込みが成功したポンコツ営業マンの様に言ってヘラヘラ笑って帰った。

とりあえず、ホームページを作らなくてはならない。