考証学のまねごと

もう年が明けて随分経ってしまいましたが、今年初の更新ですので、改めましてあけましておめでとうございます。本年も梁山泊を何卒よろしくお願い申し上げます。

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昨年末、師走という言葉のことについて少し触れましたが、その際に孫引きになってしまった「日本歳時記」が先日入荷したので、今さらながら件の記述を見てみました。

前述した、四時のはつる=しはつという記述も確かにあるものの、それに先立って、

○十二月の和名をしはすといふ僧をむかへ佛名をおこなひあるひハ経をよませ東西にはせハしる故に師はせといふを轉せるよし奥儀抄に見ゑたり…

とあるので、おや?と思い、たまたま「奥儀抄」も在庫があったので見てみると、

上の様に、文末こそ「あやまれり」と微妙に違うものの確かにほぼ同じ文章が載っていました。
(この「あやまれり」は「しはせ」が訛って「しはす」に転じたことを指しているのでしょう)

やはり師が走って師走というのも割に古くからある説の様で、近代に出来上がった俗説とは言えない様です。

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物事の考証をしたり、本の内容を批評したりといったことは古本屋の本分ではないと思うのですが、普段どうしても、悪く言えば右から左に、仕入れて国書総目録等を調べて特に珍しいものでなければ機械的に値付けする、という作業になってしまいがちなことを反省してもいるので、面白半分ながら和本の本文に当って物事を調べるというのも面白いものだと思いました。

まあ平たく言えば、自分が金を出して買っているのだから自分が楽しんで何が悪いか、いや楽しまないと損だ、ということでしょうか。

古本屋は案外仕入れた本は読まないものなのです。
というか、全部読んでいたら仕事にならないのです。

今回得た教訓は

・孫引きは(特にネットからの転載は)鵜呑みにしてはいけない。
・原典に当たることが大切

ということです。

後はやはり和本は摺りがいいに越したことはないなと思いました。
自分の商品を貶めてもしょうがないのですが、やはり摺りがいまいちだと読みにくい。

とはいえ掲載画像は商品なので、ご興味ある方はお問い合わせ下さい。

おわり